藤崎商店の配達用トラック

六角橋のまちを歩いていると、夏になると食べたくなるふわふわのかき氷。

バーでグラスに浮かぶ、透き通った大きな氷。

町内会のお祭りや学園祭で、冷たい飲み物を楽しんだことがある方も多いのではないでしょうか。

そんな私たちの身近な「冷たい」の裏側を、長年支えているお店があります。

六角橋2丁目にある「株式会社藤崎商店」。

昭和35年(1960年)の創業以来、氷やドライアイスなどを扱い、地域のお店やイベントへ届けてきた、まちの氷屋さんです。

今回お話を伺ったのは、2代目の代表取締役・藤崎高資さん。

普段はなかなか見ることのできない大きな氷やドライアイスの保管庫を見せていただきながら、氷屋さんの仕事、突然家業を継ぐことになった当時のこと、そして六角橋のまちとのつながりまで、たっぷりとお話を伺いました。

昭和35年創業、24歳で突然継いだ家業

藤崎商店2代目高資さん
電話での注文もひっきりなしに入ります

藤崎商店の創業は昭和35年(1960年)。

藤崎さんのお父さまが始め、現在は2代目の藤崎高資さんが受け継いでいます。

昭和45年(1970年)生まれの藤崎さんは、大学卒業後、一般企業に就職。

ところが24歳のとき、お父さまがウォーキング中に急逝し、突然家業を継ぐことになりました。

夏場にはアルバイトとして家業を手伝っていたため、氷を切ったり運んだりといった現場の仕事は経験済み。

しかし、いざ会社を引き継いでみると、

「銀行口座のことも、会社の細かいことも全然知らなかったんですよ」

現場の仕事ができることと、一つの会社を経営することは別の話です。

分からないことを一つひとつ確認しながら、お父さまが築いてきた仕事を引き継いでいきました。

現在は、以前妙蓮寺にあった「斎藤氷屋」で働いていたスタッフさんとも手分けをしながら、氷やドライアイスを各地へ届けています。

約135kgの角氷から、お店に合わせた「氷屋純氷」へ

藤崎商店で扱っているのは、透明度の高い「純氷」。

川崎にある昭和冷蔵株式会社で作られた、重量約135kgもの大きな角氷を仕入れています。

純氷とは、簡単にいうと、時間をかけてじっくりと凍らせた、透明で硬く、溶けにくい氷のこと。

家庭の冷凍庫で氷を作ると、真ん中あたりが白く濁ることがありますよね。

水には空気やわずかな不純物などが含まれていて、そのまま凍らせると氷の中に閉じ込められ、白く濁る原因になります。

一方、藤崎商店が仕入れている純氷は、約48時間かけてゆっくりと凍らせながら、空気や不純物を取り除いて作られています。

そのため、透明度が高く、硬くて溶けにくい氷に仕上がるのだそうです。

135キロの大きな氷を大きなカッターで器用に切り分けます

そして「氷屋純氷(こおりやじゅんぴょう)」とは、こうして製氷工場で丁寧に作られた純氷を、氷屋さんが適切に管理し、それぞれの用途に合わせて加工して届けるもの。

藤崎商店に届いた約135kgの大きな角氷も、そのままお店へ運ぶわけではありません。

配達する段階の四角いかき氷用の氷と、飲食店用の細長い氷

かき氷店などには立方体に近い形、バーやスナックなどには直方体にするなど、それぞれのお店が使いやすい形や大きさにカットして届けています。

取材に伺ったときには、すでに用途ごとに加工された氷がずらり。

普段、かき氷やグラスの中で何気なく目にしている氷も、大きな角氷から切り出され、氷屋さんの手を経て届けられていることを知りました。

そして実は、藤崎商店の氷は六角橋周辺のさまざまなお店で使われています。

かき氷なら、お茶の子まめさん、雫さん、茶寿さん、三琴茶屋さん、和カフェいちさん。

バーでは、カルヴァドスさん、ラディーさん、ルードボーイさん、東白楽のHappyBirthdayofDeathさん。

ほかにも、にゃらやさん、snack FUNさん、いわし料理 鉄ちゃんさん、snackひまわりさん、鰻浜茂さんなどなど。

(藤崎さんに教えていただいた一部。順不同です。)

「あのお店のかき氷も?」

「いつも飲んでいるドリンクの氷も?」

そう考えると、藤崎商店がぐっと身近に感じられます。

朝2時から配達も!まちを支える氷屋さんの仕事

BBQやお祭り、イベントなどにも利用できます!

藤崎さんの一日は、驚くほど早く始まることがあります。

早朝2時頃からドライアイスの配達に出て、朝9時頃からは氷の配達へ。

特に夏は大忙しです。

飲食店への定期配送のほか、町内会のお祭りや納涼祭、学園祭、地鎮祭など、さまざまな場所へ氷を届けています。

「急に氷が必要になった!」

そんな臨時・緊急の注文にも、できる限り相談に乗ってくれるそう。

かき氷機(氷削機)も貸出あり!(イメージ写真です)

電動のかき氷機や保冷庫の貸し出しも行っていて、個人からの注文も相談できます。

配達可能時間は10時から19時まで。時間外についても要相談とのこと。

前日の朝8時までに注文すると翌日配達が可能で、配達には最小ロットがあります。

定期的な納品からイベント、急なご入用まで、まずは相談してみてくださいね。

-80℃近くで保管。もう一つの柱「ドライアイス」

使用する用途別・大きさ別にカット

藤崎商店でもう一つ大切な商品が、ドライアイスです。

ドライアイスは溶けて液体になるのではなく、固体から直接気体へと変わる「昇華」という性質を持っています。

藤崎商店では25kgほどの大きな塊で仕入れ、-80℃近くの保冷庫で保管。

それでも仕入れたうちの約40%が昇華してロスになることもあるため、必要な量を見極めながら、こまめに仕入れているそうです。

ドライアイスを扱い始めたのは、お父さまの代から。

特に葬儀で使用するドライアイスは、曜日や時間に関係なく必要になります。

葬儀用については365日24時間、引き取りに対応。

ご遺体を冷たく保つためのドライアイス。

取材中にも、ちょうど葬儀関係の方がドライアイスを受け取りに来られました。

紙で包んだドライアイスを、さらにやわらかな綿で包み、ご遺体を冷たく保つために使用するそうです。

お話を聞いていると、私自身にも思い当たることがありました。

昨年、義母を見送った際にお世話になった葬儀屋さんも、藤崎商店のお取引先だったそう。

そのときは氷屋さんの存在を意識したことなどありませんでしたが、気づかないところで私自身もお世話になっていたのかもしれません。

また、飲食店との取引が多い藤崎商店にとって、大きな転機となったのがコロナ禍でした。

氷の売り上げが一時約9割も減少した一方、ドライアイスは約2割の減少にとどまったそうです。

日曜だからと休めるわけではない葬儀関係の仕事は大変なことも多いものの、コロナ禍を経験して「ドライアイスを扱っていてよかった」と改めて感じたといいます。

氷屋さんならではの思い出と、ふわふわかき氷のコツ

「氷屋さんの家に生まれてよかったことってありますか?」

そう尋ねてみると、藤崎さんから子どもの頃の楽しい思い出を聞くことができました。

お父さまが買ってきた大きなスイカをたっぷりの氷で冷やしたり、冷たい飲み物にも困らなかったり。

それが当たり前だった藤崎少年。

ところが、お友達の家でぬるいジュースや果物を出してもらったとき、

「氷ってありがたいんだな」

と気づいたのだとか。

氷がいつでもたくさんある。

氷屋さんの子どもならではの、ちょっとうらやましい日常です。

せっかくなので、氷のプロに「ふわふわのかき氷」を作るコツも教えていただきました。

ポイントは、削る前に氷の温度を少し上げること。

カチカチに冷えた氷をそのまま削るのではなく、少し温度を上げてやわらかくしてから削ると、ふわっとした仕上がりになるそうです。

冷凍庫から出した氷を発泡スチロールなどに移して、少し温度を上げるのもおすすめとのこと。

おうちでかき氷を作るときに、試してみてはいかがでしょうか。

昆虫観察に食べ歩き。おしゃべり好きな藤崎さん

おしゃべりしながら、どんどん切り分ける藤崎さん

お父さま譲りで「おしゃべりが好き」という藤崎さん。

取材中も、氷のこと、ドライアイスのこと、六角橋のお店のこと……次から次へと話題が飛び出します。

そんな藤崎さんの趣味のひとつが、昆虫観察。

採集するというより、カメラを持って山へ出かけ、じっくり観察するのが好きなのだそうです。

山仲間と集まって、それぞれ好きな虫について語り合う時間が「至福のひととき」なのだとか。

そして、もうひとつ好きなのが食べ歩き。

お酒はあまり飲まないそうですが、おいしいものには目がなく、取材中にもおすすめのかき氷屋さんやピザ屋さんなど、いろいろなお店を教えてくださいました。

これだけ食べ歩きが好きなら、六角橋のお店にもたくさん行っているのかと思いきや――。

地元には藤崎商店のお得意先がたくさん。

「あそこのお店には行ったのに、うちには来てくれないの?」

なんて言われてしまうこともあるそうで、六角橋周辺では意外と外食しないのだとか。

これだけまちのあちこちに氷を届け、たくさんのお店と顔なじみだからこその悩みかもしれません。

六角橋近隣のお店のInstagramも積極的にフォローしている藤崎さん。

自分が届けた氷がふわふわのかき氷やきれいなドリンクになり、その向こうでたくさんのお客さんが喜んでいる様子を見ると、大きなやりがいを感じるそうです。

人気店のかき氷、バーのグラスでゆっくりと溶けていく透明な氷、夏祭りの冷たい飲み物。

そして、大切な人との最後の時間を支えるドライアイス。

普段はなかなか意識することがなくても、藤崎さんたちが届けた「冷たさ」は、今日もまちのあちこちで私たちの暮らしを支えています。

お父さまから引き継いだ藤崎商店。

そして、お父さま譲りだというおしゃべり好きなところも。

取材中、いろいろなことを楽しそうに教えてくださる藤崎さんを見ていると、お店の方々との関係の良さや、長年まちの皆さんに頼りにされてきた理由が、なんとなく分かるような気がしました。

今年の夏、六角橋でかき氷を食べたり、グラスの中の透明な氷を眺めたりしたら、少しだけ思い出してみてください。

その一杯の向こう側には、朝早くから氷を切り、まちへ届ける藤崎さんたちの仕事があるかもしれません。

株式会社藤崎商店

住所:横浜市神奈川区六角橋2丁目14-13

電話:045-481-0121

FAX:045-413-0664

定休日:7月8月は無休/9月~翌年6月は日・祝

取扱品:各氷、ドライアイス、ぶっかき氷、丸氷、ダイヤアイス、クラッシュアイス、氷柱、氷削機貸出、保冷庫貸出、切炭など

配送可能時間:10:00~19:00
※時間外は要相談

注文:前日朝8時までの注文で翌日配達
※配達には最小ロットがあります。
※臨時・緊急の注文、イベントへの納品、個人での注文なども相談できます。
※葬儀用ドライアイスは365日24時間引き取り可能です。

営業時間などの最新情報は、藤崎商店公式サイトをご確認ください。

HP:https://www.fujisakishouten.com/

Instagram:https://www.instagram.com/fujisaki.shouten/

この記事を書いたひと

あっきー

神奈川区在住。

22歳の娘と20歳の息子、夫の4人暮らし。

おいしいものやたのしいことなどのオススメ情報をオススメするのが好きです。

2代目編集長🔰