
六角橋の街を歩いていると、ちょっと気になる名前のお店があります。
その名も「巣穴」。
ここは、オリジナルニットブランド「onaji anano mujina(オナジアナノムジナ)」のアトリエ兼ショップ。
店内には、こだわりの靴下やニット小物とともに、ヴィンテージ雑貨「MONAURAL(モノラル)」のアイテムが並びます。
2025年3月にオープンした「巣穴」を訪ね、onaji anano mujinaを手がける村山祐介さんに、ブランドが生まれるまでのことや、靴下づくりについてお話を伺いました。
六角橋にできた、小さな「巣穴」

「巣穴」は、製作場として使われているアトリエの一部を開放したショップです。
onaji anano mujinaの靴下を中心としたニット小物と、ヴィンテージ雑貨「MONAURAL」のオブジェなどを展示・販売。
実際に商品を手に取り、素材の質感や編み方を確かめることができます。
onaji anano mujinaは卸売を中心に展開しており、伊勢丹新宿店や阪急うめだ本店、各地のセレクトショップなどでも取り扱われています。
そんなブランドの拠点が、実はここ六角橋にあるのです。
村山さんは横浜市港南区の出身。
以前は日吉に暮らしていましたが、2024年に白楽へ引っ越してきました。
奥さまが都内へ通勤しやすいことや、村山さんが趣味で通うフットサルコートへのアクセスが良かったことも、この街を選んだ理由のひとつ。
実際に暮らしてみると便利で居心地もよく、すっかり気に入ったそうです。
そしてブランドを本格的に動かしていくタイミングと重なるように、2025年3月、暮らしのすぐそばに「巣穴」が生まれました。
なんだか自然と六角橋に引き寄せられてきたようにも感じます。
アパレルから、靴下の世界へ

村山さんは、長くファッションの世界で仕事をしてきました。
某セレクトショップでアパレルの経験を積んだ後、31歳の頃に靴下ブランド「rasox(ラソックス)」へ。
そこから約12年間、靴下の仕事に携わってきました。
2024年に前職を退職すると、これまで培ってきた経験をもとに、自分自身のブランドづくりをスタート。
編み機について改めて学び、1年間の試作を重ねながら形にしていきました。
そうして生まれたのが「onaji anano mujina」です。
素材やデザインはもちろん、実際に足を入れたときの心地よさまで考えられた靴下。
長年この世界に携わってきた村山さんだからこそのアイデアが、一足一足に詰まっています。
靴下なのに「横編み」?

onaji anano mujinaの大きな特徴が、その編み方です。
一般的な靴下の多くは、靴下専用の「丸編み機」で筒状に編まれます。
一方、onaji anano mujinaが採用しているのは、セーターなどのニット製品にも使われる「横編み機」。
さらに、縫い目を極力減らして立体的に編み上げる「ホールガーメント®」の技術を取り入れています。
高級ニットなどでも使われるこの技術は製造に時間が掛かるので靴下に用いるのは、とても珍しいのだそう。
使用している「ホールガーメント®」は和歌山県の㈱島精機製作所で開発された編み機で、現在は国内の工場で生産されています。
締め付けにくく。それでも、ずれにくい。

定番モデルのひとつ「Ana」には、甲とレッグ部分でリブの幅を変える独自の変則編みが採用されています。
締め付け感を抑えながら、長時間履いてもずれ落ちにくいよう、丈の長さも試作を重ねて調整。
履き口にはブークレ糸を使い、ゴムの跡が肌につきにくく、洗濯後も型崩れしにくいよう工夫されています。
表糸にはオーガニックコットンを使用。
「靴下のゴムがきついのが苦手」という人にも手に取ってもらいたい一足です。
「巣穴」には年配のお客さんも増えていて、中には80代の常連さんも多くいるのだとか。
年齢や性別を問わず、デザインだけではなく「履き心地」で選ぶ人が増えているのも印象的でした。
この厚さで夏向き? 和紙でつくる「Elsa」

そして、取材中に特に気になったのが「夏こそ履いてほしい」という靴下。
「Elsa」です。
見た目にはしっかりとした厚みがあり、「暑くないのかな?」と思ってしまいますが、実は素材に使われているのは太番手の和紙糸。
さらに、吸水速乾性に優れた高機能素材「COOLMAX®(クールマックス®)」を組み合わせています。
和紙ならではのドライな質感と調湿性に、COOLMAX®の吸水速乾性をプラス。
太い糸でふっくらと編むことで生まれる空気の層が外からの熱を伝わりにくくし、素材が持つ調温・調湿機能を生かした一足に仕上げています。
「薄手=夏用」と思っていた靴下のイメージが、ちょっと変わります。
春から秋にかけておすすめしたいという「Elsa」。
実際に触れてみると、和紙ならではのシャリッとした風合いも印象的です。

同じく和紙を使ったニット帽「Isaac」もあり、こちらは見た目のボリュームに反して驚くほど軽い仕上がり
和紙糸と吸水速乾性のある素材を組み合わせ、夏にもさらりと被れるニット帽になっています。
「ニット=冬」。
そんな思い込みをいい意味で裏切ってくれるアイテムです。
同じものは二度とできない「ムラ」も楽しむ
素材だけでなく、色や表情にもonaji anano mujinaらしいこだわりがあります。
2026年春夏モデルの「Grace」に取り入れられているのは「ムラ染め」。
規則的な模様を作るのではなく、あえて色の濃淡やムラを残すことで、自然でやわらかな表情を生み出しています。
同じ模様は二度と作れないため、一足一足が少しずつ違う。
均一できれいに整ったものが多い今だからこそ、不完全さに人の温かみを感じる。
そんな考え方も、このブランドのものづくりにつながっています。
店頭にはほかにも、履き込むほど糸が馴染み、ふっくらとした風合いへ変化していくものや、さりげなくラメを取り入れたものなど、素材や編み方の異なる靴下が並びます。
気になるものがあれば、ぜひ実際に手に取って違いを感じてみてください。
イラストにも、昔からのつながりが

onaji anano mujinaを見ていると、もうひとつ気になるのが個性的なイラスト。
ブランドのイラストを手がけているのは、村山さんの古くからの友人であるイラストレーターみやもとさぶろうさんです。
実は六角橋でも、その作品を見ることができます。
そして実は、そのイラストが六角橋の街にも飛び出しています。
きっかけは、「巣穴」のお隣にあるまぐろ屋相馬商店の相馬さんが、トラックを買い替えることになったこと。
「人目を引いて、見ていて楽しくなるようなデザインにしたい」と考えていた相馬さんの目に留まったのが、「巣穴」に飾られていたみやもとさんのイラストでした。
ひと目見て「これがいい!」と気に入り、トラックのデザインをお願いすることに。
こうして、みやもとさんとのコラボレーションが実現しました。


ブランドのために描かれたイラストが、「巣穴」での出会いをきっかけに、お隣のお店のトラックへ。
昔からの友人とのつながりが、今度は六角橋で新しいつながりを生んでいる。
そんなエピソードも、この「巣穴」という場所らしく感じました。
ブランドだけを見ていると気づかないところで、昔からの人とのつながりが六角橋の街にも広がっています。
見かけたら是非チェックしてみてください!
(次回は相馬商店さんをご紹介)
ヴィンテージ雑貨「MONAURAL」も一緒に

「巣穴」に並ぶのは、onaji anano mujinaの商品だけではありません。
もうひとつの顔が、ヴィンテージ雑貨「MONAURAL」。
村山さんの友人の樋口幸太さんが手掛けるブランドです。
店内には、独特のフォルムや質感を持つヴィンテージ花器などが並びます。

中でも目を引くのが「Fat Lava(ファットラヴァ)」と呼ばれる、主に1960年~70年代に西ドイツで盛んに作られた陶器。
溶岩を思わせるゴツゴツとした釉薬や、大胆な色・形が特徴で、ひとつ置くだけでもかなりの存在感です。
近年は世界的にも人気が高まり、年々価格も上がっているのだとか。
靴下を見に来たはずが、気づけば花瓶を眺めている。
ヴィンテージ雑貨が気になって入ったら、今度は靴下を履いてみたくなる。
そんな思いがけない出会いも「巣穴」の面白さです。
六角橋の「巣穴」から、その先へ

現在、onaji anano mujinaは卸売を中心に、百貨店やセレクトショップなどへ活躍の場を広げています。
そして、その先に見据えているのは海外。
2026年11月からは、フランス・パリの「MERCI(メルシー)」を始めとするセレクトショップでの展開も始まる予定だそうです。
六角橋にある小さな「巣穴」から生まれたものが、全国へ、そして海を越えてパリへ。
そう考えると、なんだかワクワクしてきます。
長年靴下に携わってきた村山さんの経験と、新しいものづくりへの挑戦。
昔からの仲間とのつながり。
そして、新しく暮らし始めた六角橋という街。
いろいろなものが、この場所でちょうどよく混ざり合っています。
六角橋を歩いていて「巣穴」を見つけたら、ぜひ中をのぞいてみてください。
素材や編み方までこだわったちょっと珍しい靴下と、ひとつひとつ表情の違うヴィンテージ。
ここでしか出会えない「お気に入り」が見つかるかもしれません。
巣穴
住所:横浜市神奈川区六角橋1-9-15
営業時間・営業日:不定期
※詳細はInstagramでご確認ください。
Instagram:https://www.instagram.com/onajiananomujina_official

この記事を書いたひと
あっきー
神奈川区在住。
23歳の娘と21歳の息子、夫の4人暮らし。
おいしいものやたのしいことなどのオススメ情報をオススメするのが好きです。
2代目編集長🔰


